FOR DAVOS
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■子どもら■ 地球をやさしく転ばせます 怒鳴り声は財産だ あの子をかみさまだなんて呼ばないで 僕らは明け方に恋をうたう どこまでもかけつけにゆくから
■ゆく先■ わたしは言葉を知らぬ子で やさしいって、きみは泣いたな 四十億年待っていて あの花の名前をおしえてあげる 行く先であなたが辛い目に遭わないように
■星が落ちたら■ たくさんの星が落ちたら みなで手を繋いで見に登ろう お前があちらの空を見てくれるなら あの子は百の過去をじっと待って おれは千度でも走って見せるから そうしたら、きっともう一度迎えにゆく
■こぼれて流れる■ あのお国では、死後、たましいは体をはなれると言う 玉の汗、ひかるな、夜に光源はいけない 嬉しいことも恥ずかしいことでも言ってやりたいんだ みどりの電気が小さく走った こんな書き出しの手紙ばかり きみの名をぼくは一万回呼んだ 私はいつか、あの、梅の花がうつくしい里へと還ろう
■産声■ かわらないことを恐れるの 慈しんだら負けになるのか そんなにこの世を嘆くんならば おれはお前の代わりに泣き喚こう 風がうつくしく揺れた お前が泣いた日
■人はなんて呼ぶのだろう■ 下駄箱にのこされた笑い声の残響と 雲が翳らせながら歩み来た道 朱色の花びらが散って、散って、 夕食まであそべるよと誰かが囁いた わたしはひとりぼっちを怖がって 北へ北へと逃げきる 大路のそばには可愛い子がまっていて あんよが痛くてどこにも行けないと泣いた わたしが橙のちょうちんに呼ばれていたこと 本当は、そのおしゃべりを止めさせたかった夜のこと
■みにつけるものはただ一つ■ あなたの声がすきだなあ ひどくせっかちなところも、良い 節ばったゆびさきは、繋ぐことに一生懸命で こんなにかなしい優しさに出会って 旅に連れてくのはただ一つだけ
■ぼくたちイタイケな男の子■ あいつらホモだぜ、マジだぜ さあさあ俺の名前を言ってみろ スチュワーデスのお姉さんと仲良くなるには 至急配置につけやろうども! その学修能力の無さ、マトリョーシカの如し
■ほおが熱くなる■ やさしくなんて出来ない 瞼にふれて、額のかたちにふれて、 夕日の中を走り出すタイプじゃ俺はないんだ! 笑っておくれよ、マイガール 逃がしてやりたい
■おはなししたい■ 便りはお前に届いたか それは本当にお前にとってやさしいか 悲しみをぬぐう布はお前の手元にあるんだろうか 生きてるか、どんなになっても生きてるか そんな電話ができたら、どれだけ良いのに
■君は何をそんなに伝えたがる■
下り坂から駆けていく車輪 ノートの端に殴る恋文 夕暮れからその目を覆ってしまいたい 両手は水をすくう 読んで貰いたい読み物があるんだ
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